『もらい泣き』を語る上で欠かせないのが、インターネットやテレビのバラエティ番組を席巻した「再生速度を0.8倍(約80%の速度・ピッチダウン)に落とすと、平井堅が歌っているように聴こえる」という有名な音響現象です。
当時、ニコニコ動画やYouTube、ネット掲示板などで爆発的に拡散されたこの検証動画は、単なる偶然の空耳ではなく、音響物理学的に明確な根拠が存在します。
音楽音響の研究者らも指摘するように、一青窈の歌声は倍音成分が極めて豊富で、鼻腔から頭部にかけて響かせる共鳴テクニックが平井堅の発声フォームと酷似しています。ピッチを落とすことで喉仏の位置が下がったような錯覚を生み出し、結果として「まるで平井堅が情熱的にソウルフルな新曲を歌っている」かのような現象が完成したのです。なお、平井堅の楽曲『大きな古時計』を1.25倍速にすると一青窈に聴こえるという逆パターンも実証されており、一流の表現者同士が持つ声質の親和性を示す興味深い事例となっています。