『人間失格』は、太宰治が1948年3月から5月にかけて熱海および大宮で執筆し、その直後の1948年6月13日深夜、山崎富栄と共に玉川上水へ入水自殺を遂げたことで知られます。同年6月19日、39歳の誕生日に遺体が発見されました。
本作は自伝的小説(私小説)の色彩を強く帯びていますが、綿密に計算された純文学作品でもあります。
- 実生活との重なり:青森の大地主(津島家)の六男として生まれた出自、東大中退、左翼運動への関与、女性との心中未遂、パビナール(麻薬性鎮痛剤)中毒、武蔵野病院への入院歴など、葉蔵の辿った道は太宰の実人生と酷似しています。
- 文学的テーマ(意味と主題):単なる告白録にとどまらず、「近代社会の欺瞞に適応できない純粋な精神の挫折」を描き出しています。太宰は葉蔵を通じて、戦前・戦後の価値観の変遷や、平然とエゴイズムを押し通す「世間」という怪物の暴力性を告発したのです。