物語の冒頭において、妲己は「冀州侯・蘇護の娘の肉体を奪った千年狐狸精(狐の妖怪)」として描かれます。名君として名高かった殷の第30代皇帝・紂王を誘惑術「テンプテーション」で骨抜きにし、酒池肉林の贅沢に溺れさせ、国庫を空にして民を苦しめる姿は、古典的な「傾国の美女」そのものでした。しかし、これらはすべて、後述する真の目的を隠蔽するための壮大な欺瞞工作に過ぎませんでした。
作中中盤から終盤にかけて明かされる妲己の真の正体は、かつて太古の宇宙から飛来し、地球の生態系を作り出した異星人「始まりの人類」の一員です。すなわち、黒幕である女媧と同等の起源を持ち、数億年単位の時間を生き永らえてきた究極の生命体でした。彼女が殷王朝を崩壊へと導いた本当の理由は、単なる快楽殺人や権力欲ではなく、地球の歴史を幾度となく「巻き戻し(リセット)」してきた女媧の支配サイクルを完全に断ち切るためだったのです。
女媧は、自分が創り出した地球生命が自立した文明を築こうとするたび、天変地異を起こして文明を滅亡させてきました。妲己はこの絶望的なループを打破すべく、あえて女媧の「歴史の道標」に従う道化を演じながら、仙界と人間界を総動員した大戦争(封神計画)を誘発。女媧が姿を現さざるを得ない極限状況を演出し、その隙を突いて女媧の生命エネルギーを丸ごと捕食・強奪するという途方もない計画を単独で遂行していたのです。