では、入居者側にお金の支払い義務が生じるのはどのような状況でしょうか。国土交通省原状回復ガイドライン借主負担理由として明確に定められているのは、入居者の「故意・過失・善管注意義務違反」に起因する損傷です。
クッションフロアに関して借主負担と認定される典型例は以下の通りです。
- キャスター付きチェアを直接転がし続け、表面を著しく摩耗・剥離させた場合
- 重量物を引きずって床に深い引き裂き傷や破れを作った場合
- 液体をこぼしたまま放置し、裏面にまでカビやシミを浸透・腐食させた場合
- 自己流の補修を試みてアイロンで床を溶かしたり、変色・焦げ跡を残した場合
さらに重要なのが、クッションフロアへこみ経年劣化の判断基準です。クッションフロア(塩化ビニル系床材)の減価償却資産としての耐用年数は一般的に6年と設定されています。新築時から6年が経過した時点で、その残存価値は理論上「1円(または残存割合10%)」まで低下します。
仮に過失によってへこみや傷を作ってしまった場合でも、入居年数に応じた減価償却が適用されるため、入居後3年経過していれば半額程度、6年を超えて住み続けていれば補修負担額は極めて限定的(最低限の工賃や端数程度)になるのが法的ルールです。管理会社から「1面全体の新品張り替え代」を提示された際は、築年数と前回の床張り替え時期の開示を求めることが肝要です。