なぜ植物エキス一つでこれほど強力に薬の効果が消し去られてしまうのでしょうか。その鍵を握るのが、小腸上皮や肝臓に存在する主要なチトクロームP450酵素群の主役である「CYP3A4」と、異物を細胞外へ汲み出す輸送体「P糖蛋白」です。
セイヨウオトギリソウに含まれる主要成分「ヒペルフォリン(Hyperforin)」は、細胞内の受容体PXR(プレグナンX受容体)に強力に結合します。これによりDNAの転写が促進され、体内ではCYP3A4酵素やP糖蛋白の産生量が人為的に激増します。代謝工場の処理ラインが急増したような状態になり、CYP3A4によって代謝される併用薬が瞬く間に分解されてしまうのです。
事態を重く見た日本の厚生労働省は、早くも2000年5月に「セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)と医薬品の相互作用について」という緊急の注意喚起を発達させました。現在に至るまで、医療用医薬品の添付文書には併用注意・禁忌事項として明記され続けています。体質改善を期待して摂取したサプリが、日々の正規治療を根底から無力化してしまう構造がここにあります。