インターネット上の考察掲示板やSNSでは、今でも「カツマタ君は物語の最後に思いつきで出された後付けのキャラクターではないか?」という誤解が散見されます。しかし、綿密に原作を読み解くと、浦沢直樹氏は連載初期の第1巻・第2巻の段階からカツマタ君の伏線を周到に配置していました。
象徴的なのが、理科室の怪談です。小学生時代、「フナの解剖実験を誰よりも楽しみにしていた前日に急死した」と噂されていたのがカツマタ君でした。しかし実際には死んでおらず、お面を被せられて存在を透明化されていたに過ぎません。夜の理科室でフナの解剖を行っていたカツマタ君の姿をケンヂたちが目撃したことが、後の「理科室の幽霊騒動」の種明かしとなっています。
また、佐ダ(サダキヨ=佐々木清)のお面をフクベエやカツマタ君が使い回すことで、誰が誰だか分からない「顔のない少年」の不気味さを意図的に演出していました。読者が「フクベエが生きていたのか、それとも別人なのか」と混乱すること自体が、作者が仕掛けた「アイデンティティの消失」というテーマそのものだったと言えます。