風営法改正から40年以上が経過した2026年の現在、当時の姿をそのまま残す純粋な「木造の連れ込み宿」は、建物の老朽化や店主の高齢化、防災上の理由による解体が進み、日本全国を探しても絶滅寸前の状態にあります。
しかしその一方で、昭和レトロ建築や都市風俗史の貴重な遺産として、当時の建物や意匠を記録・保存しようとする動きが活発化しています。特有の透かし彫りの欄間、磨りガラスの幾何学模様、曲線を多用したタイルの洗い場など、職人の手仕事が光る凝ったディテールは、現代の工業化された建築では再現不可能な文化的価値を持つものとして、若い世代の写真家や建築愛好家から熱い視線を浴びています。
地方都市や古くからの温泉街では、元連れ込み宿の建物をリノベーションし、インバウンド向けの古民家ゲストハウスやノスタルジックなカフェとして再生させる事例も登場しています。性的なタブーとして覆い隠されてきた昭和の空間は、時代の一端を映し出す貴重な歴史の証言者として、新たな文脈で語り継がれようとしています。