長年インターネット上のコミュニティやSNSで定期的に浮上するのが「ピノコは最終回で死んだのか?」という死亡説の噂です。結論から述べると、原作漫画および公式の正史においてピノコが死亡する結末は存在しません。
この誤解が広まった主な要因は、以下の3つのエピソードや演出が複合的に混同された結果と考えられます。
第一の要因は、原作屈指の名作として名高い第67話「緑柱石(エメラルド)」や第229話「人生という名のSL」などの夢幻的なエピソードです。「緑柱石」ではピノコが公害病(カドミウム中毒様症状)に倒れ、ブラック・ジャックが必死の治療を行う緊迫した展開が描かれます。また、ピノコが美しい大人の女性(八頭身のレディ)に成長し、ブラック・ジャックと本当の夫婦として暮らす幻想的な描写(第26話「春一番」など)が読者の記憶に強く焼き付き、「叶わぬ夢を残して命を落としたのではないか」という悲劇的な先入観を生みました。
第二の要因は、ピノコ特有の身体的弱点です。ピノコは骨格や関節、皮膚の一部が合成樹脂で作られているため、体が水に浮かず泳ぐことができません。水中に落下して溺れかけるシーンが作中に何度も登場し、そのたびにブラック・ジャックが命がけで救出するドラマが展開されるため、これが読者の記憶の中で「水死した」という誤情報へすり替わったケースが散見されます。
連載最終回となった「人生という名のSL」(週刊少年チャンピオン1983年10月14日号)においても、ブラック・ジャックが乗る列車の中にピノコはしっかりと寄り添っており、二人の旅路がこれからも続いていくことを示唆して幕を閉じています。