水平線が白み始めると同時に、護岸の空気は一変する。ヒュン、という鋭い風切り音とともに何十本ものロッドが一斉に振り抜かれ、60グラム前後の鉛の塊が大阪湾の深みへと吸い込まれていく。流行のショアジギングに興じる若者たちの横では、小さなバケツを手にした親子連れがアミエビをカゴに詰め、サビキ釣りの仕掛けを静かに落とし込んでいた。
荒々しいルアーフィッシングと、穏やかなファミリーフィッシング。一見すると相容れない二つの光景が、ここでは違和感なく溶け合っている。鈴なりにかかる銀色のイワシやアジに歓声をあげる子どもたち。そのイワシの群れを底から突き上げるように、海面を突如として巨大な捕食音が切り裂く。食物連鎖のドラマが護岸からわずか数十メートルの距離で完結しているのだ。隣り合うアングラー同士が「タモ入れ手伝いましょうか」と声を掛け合う光景も珍しくない。過密な釣り場でありながら、暗黙の連帯感がこの場所の秩序を支えている。