名曲の歌詞を語る上で欠かせないのが、それを歌い上げる「声」そのものの質感だ。『ジュテーム・モア・ノン・プリュ』におけるジェーン・バーキンの声は、歌唱というよりもほとんど呼吸に近い。メロディを正確に追うこと以上に、感情の揺らぎや躊躇がそのままマイクに拾われている。
言葉は、どのように発声されるかによってその意味を180度変える。朗々と歌い上げられる「愛している」よりも、消え入るような囁きで絞り出される「ジュテーム」の方が、時に圧倒的な切実さを帯びる。現代のボカロPやインディーズアーティストたちも、ヴォーカルエフェクトやウィスパーボイスの録音技術を極限まで突き詰め、声のテクスチャーによって歌詞のインパクトを増幅させるアプローチを強めている。