水戸部凛之助というキャラクターを語る上で最大のトピックとなるのが、「連載全編およびテレビアニメシリーズを通じて一言も言葉を発しない」という徹底された設定です。
物語の序盤から全国制覇を果たすクライマックスに至るまで、彼のセリフ枠には常に「……」「!」といった記号や息遣いの描写のみが充てられています。病気やトラウマで声が出ないわけではなく、公式ファンブック等の解説によると「ただ単に言葉を口にする必要性を感じていないため喋らない」という、極めて純粋かつ徹底した無口気質であることが明かされています。
この徹底ぶりはアニメ版の制作現場でも貫かれました。アニメ『黒子のバスケ』のエンドロールにおいて、水戸部凛之助の役名表記の隣に声優(CV)の名前が記載されたことは一度もありません。息を呑む音や気迫の唸り声すらも効果音や演出で表現され、キャストを配置しないという徹底した演出方針が採られました。
では、言葉を発しない彼がどのようにしてチームメイトと意思疎通を図っているのか。そこで不可欠となるのが、中学時代からのチームメイトである小金井慎二による「通訳」です。
小金井は、水戸部の微妙な眉の動き、視線の配り方、息遣いや佇まいを見ただけで、「『ここはオレに任せて外を警戒してくれ』って言ってるぜ!」「水戸部が『ナイスパス』って言ってる」と、長文のニュアンスまで寸分の狂いもなく言語化します。言葉を交わさずとも成立するこの2人の阿吽の呼吸は、誠凛高校バスケ部の絆の強さを象徴する名物シーンとして親しまれています。