投薬治療と並んで世界的に高い推奨度(エビデンスレベルA)を獲得しているのが、嗅覚刺激療法トレーニング(Olfactory Training)です。ドイツのトーマス・フンメル教授らが考案したリハビリ法であり、嗅神経から大脳の嗅覚野に至るシナプス結合を、意図的な香りの刺激によって再構築(ニューロプラスティシティ:神経可塑性)させる科学的アプローチです。
専用の器具がなくても、市販の精油(エッセンシャルオイル)を用意すれば今日から自宅で実践可能です。基本となるのは以下の4つの代表的な香りカテゴリーです。
- 花(フローラル):ローズ(またはゼラニウム)
- 樹脂・ハーブ(ハーバル):ユーカリ
- 果実(フルーティ):レモン
- 香辛料(スパイシー):クローブ
手順は極めてシンプルです。精油の小瓶を開け、鼻から数センチ離した位置で「今、自分はレモンの香りを嗅いでいる」と脳内で強く情景をイメージしながら、15秒間深く静かに匂いを吸い込みます。10秒間のインターバルを挟み、4種類の香りを順番に繰り返します。これを「朝と夜の1日2回」、最低でも3カ月間継続します。「匂いが全くしないから意味がない」と途中で諦めてしまう患者が多いのですが、全く知覚できない段階であっても、刺激を脳へ送り続ける行為そのものが神経再建のトリガーとなります。