なぜ、近代化の極致ともいえる山手線にこの踏切だけが残されてきたのか。理由は山手線と並走する湘南新宿ラインや貨物線が織りなす複雑な線路配置、そして武蔵野台地の東端に位置する崖線特有の高低差にある。地形的な制約から鉄道の高架化も地下化も容易ではなく、結果として昭和の風情を残したまま現代に取り残される形となった。
しかし、朝夕のラッシュ時には1時間のうち40分以上も遮断機が下りたままとなる。国土交通省から「改良すべき踏切道(開かずの踏切)」として指定を受けたことで、地域のボトルネック解消と防災機能の向上は待ったなしの課題となった。歩行者や緊急車両の円滑な通行を確保するためには、ノスタルジーだけでは押し通せない都市の現実が存在したのである。