本作を手にした読者の多くが口を揃えるのが、「涙なしには最後まで読めない」という感想です。大人がこれほどまでに心を揺さぶられる最大の理由は、「いま目の前にいる我が子の姿」と「不可逆な時間の流れ」が鮮やかに重なり合う構造にあります。
日々の育児は慌ただしく、夜泣きや癇癪に追われていると、目の前の時間はずっと続くかのように錯覚しがちです。しかし、絵本が提示する未来の情景は、「この愛おしい手をつないでいられる時間は、ほんの一瞬にすぎない」という切ない真実を直感的に気付かせます。
また、物語の終盤で描かれる「老いた自分」と「自分を慈しんでくれた母」への眼差しも涙を誘う決定打です。自分が親になったことで初めて理解できた親の愛と、いつか必ず訪れる別れ。母であり娘でもある読者の心に、二重の感動が押し寄せる仕掛けが施されています。