のし梅を語る上で、愛好家の間で頻繁に議論を呼ぶのが「山形のし梅」と「茨城・水戸のし梅」の相違点です。どちらも竹皮に包まれた平たい梅菓子という共通点を持ちながら、誕生の背景や目指す味わいの方向性には際立ったコントラストが存在します。
山形のし梅が医療用の保存食・民間薬から派生したのに対し、水戸ののし梅は水戸藩第9代藩主・徳川斉昭公が偕楽園に植樹させた梅林の有効活用と、茶の湯の席で楽しむ風雅な干菓子として発展しました。この出自の違いは、使用する梅のコンディションや原材料、仕上げの工程にも色濃く反映されています。
山形の手作業によるのし梅の作り方は、現在でも熟練の技を要します。厳選された完熟梅を煮詰めて皮や種を丁寧に取り除き、寒天と砂糖を絶妙な火加減で練り上げます。それを型に流し込んで冷却固化させた後、1枚ずつ職人が包丁で短冊状に切り分け、天然の竹皮で挟んで温風乾燥室で数日間じっくり水分を飛ばしていきます。この竹皮乾燥の工程こそが、梅の酸味にまろやかな竹の香気を移し、独特のコシと歯ざわりを生み出す生命線となっています。