創設期の混乱期において、グループの舵取りを託されたのが初代キャプテンの桜井玲香だ。2012年6月に正式に就任した彼女のスタイルは、威圧感で引っ張る絶対的リーダーとは対極に位置していた。自らを「ポンコツ」と謙遜し、時にダンスのフリを忘れ、MCで言い間違えるチャーミングな一面を見せながらも、メンバー一人ひとりの個性を温かく包み込む自由な空気感を作り上げた。
総合プロデューサーである秋元康や、制作を手掛けるソニー・ミュージックレーベルズの運営陣が当初想定していたアイドル像とは異なり、桜井がもたらした「誰一人として置き去りにしない」優しさは、グループ独自の品格と居心地の良さを醸成することになる。ギスギスした競争原理に頼らず、お互いを尊重し合う乃木坂文化の土台は、まさに彼女の柔らかで芯の強い生き様によって作られたと言っていい。