人間関係のなかでも、「蓼食う虫も好き好き」というフレーズが最も生々しく飛び交うのが恋愛相談の現場です。端から見れば誰もが羨む容姿端麗な女性が、お世辞にも清潔感があるとは言えない男性に尽くしていたり、経済的に自立した男性が理不尽なパートナーに振り回されていたりする構図は、古今東西を問わず観察されます。
恋愛心理学の視点からこの現象を解明すると、他人が「蓼(苦味)」とみなす欠陥こそが、当事者にとっては「代えがたい精神的安定剤」として機能しているケースが極めて多いことが分かります。
心理学では「相補性の法則」と呼ばれますが、人間は自分に欠けている要素や、幼少期の家庭環境で慣れ親しんだ特異な刺激をパートナーに求める傾向があります。一見するとダメ男に見える相手が、本人の強い自己否定感や承認欲求を奇妙な形で満たしている場合、第三者が「あんな苦い男のどこがいいのか」と首を傾げても、本人にとっては至高の精神的報酬なのです。
周囲の友人たちが「蓼食う虫も好き好きだから放っておこう」と陰口を叩く背景には、羨望と困惑が入り混じった防衛機制が存在します。自分たちの常識的な恋愛市場のモノサシでは測れないカップルに対して、ラベルを貼って処理しようとする心理的反応です。しかし、当事者たちの手記やカウンセリング記録を紐解くと、外部からのそうした浅薄なレッテル貼りが、かえって当事者同士の強固な「共依存」を加速させる触媒になっている事例も少なくありません。