ビジネスの現場、とりわけマネジメントにおいて最も摩擦が起きやすいのが「人事評価における公正と公平」のバランスです。民間調査機関が実施したビジネスパーソン意識調査によると、自社の人事評価に納得していない社員の割合は全体の約58%〜64%に達しています。そして不満理由の内訳を分析すると、7割以上が「評価基準がブラックボックスであること」を挙げています。
ここで多くの経営者や管理職が陥る罠が、「公正」と「公平」の履き違えです。現場で起きているリアルな軋轢を見てみましょう。
オープンワーク等の転職口コミプラットフォームや組織診断アンケートに寄せられる社員の手記には、次のような切実な嘆きが散見されます。『上司はチームの和を乱さないよう、全員に中間評価の「B」をつけた。本人は「公平に配慮した」つもりかもしれないが、徹夜で新規案件を獲った私からすれば不公正極まりない裏切りだ』という声です。
組織心理学では、人間が組織に対して抱く納得感を2つの要素に分解します。
- 手続き的正義(Procedural Justice = 公正):評価の基準、目標設定の合意プロセス、評価決定の透明性や開示ルールに不正や主観のブレがないこと。
- 配分的正義(Distributive Justice = 公平):個人の残した成果、業務難易度、労働時間などのインプットに対して、見返りとなる報酬やポストのアウトプットが妥当なバランスを保っていること。
前述の失敗事例は、全員を同じように扱う「悪しき平等」を「公平」と勘違いし、さらに成果に応じた査定を行うという「公正なルールの運用」を放棄した典型例です。公正な手続き(オープンなルール)が担保されて初めて、個別の事情や成果を加味した公平な配分が機能します。この順序を逆にすると、意欲的なハイパフォーマーから順に組織を去っていくことになります。