ここで、一般的に流布している誤解を二つ指摘しておきたい。第一の誤解は「おいでシャンプーコールは特定の商品のCMソングだった」という説である。これは完全な誤りだ。編集部が広告アーカイブおよび楽曲データベースを照会した限り、そのような事実は確認できない。この誤解は、フレーズのリズムがキャッチーであるがゆえに、CMソングや替え歌と混同された結果と考えられる。
第二の誤解は「発信者が特定の有名人である」という説だ。これも根拠が薄い。複数のまとめサイトが名前を挙げているが、いずれも推測の域を出ず、本人確認が取れた事例はない。ネット上の噂は、空白を埋めようとする想像力によって増幅される。これは社会学でいう「集合的記憶の捏造」に近い現象である。
これらの誤解が生まれる背景には、オリジナル文脈の完全な消失がある。文脈が失われると、人は空いた穴に自分にとって都合の良い物語を埋める。おいでシャンプーコールが「真相」を求められ続けるのは、ミームそのものの魅力ではなく、空白を埋めたいという人間の認知的な癖に支えられている面が大きい。