日常のケアにおいて、最も多くの人が陥りがちな誤謬が「普段の歯磨きついでに歯ブラシと歯磨き粉で磨く」「菌を殺すために熱湯をかける」という2つの行為です。一見すると衛生的に思えるこれらの手法ですが、歯科材料工学の観点からは極めてリスクが高い行為とされています。
まず、マウスピース歯磨き粉NG理由として挙げられるのが、ペーストに含まれる研磨剤(無水ケイ酸や炭酸カルシウムなど)の存在です。天然の歯のエナメル質を磨くための微粒子であっても、医療用ポリウレタンやコポリエステルといったマウスピース素材にとっては硬すぎます。歯磨き粉をつけて擦ると、肉眼では見えない0.5〜2マイクロメートルの微細な傷が無数に刻まれます。この微小な溝に口腔内細菌が入り込み、強固なバイオフィルム(細菌の膜)を形成するため、かえって着色や異臭が悪化する皮肉な結果を招きます。
さらに深刻なダメージをもたらすのがマウスピース熱湯変形理由です。歯科用アライナーやリテーナーに用いられる熱可塑性プラスチックは、一般に45℃〜60℃前後でガラス転移点(軟化し始める温度)を迎えます。熱湯(80〜100℃)を注ぐと瞬時に形状がゆがみ、ミリ単位・ミクロン単位で設計された矯正ステップや噛み合わせのアライメントが完全に崩壊します。一度変形したマウスピースを装着し続けると、計画通りの歯移動ができないばかりか、顎関節症や不正咬合を自ら誘発することになりかねません。