ネット上のコミュニティでは、「廃車になった電車を買い取ってカフェを開くのは夢がある」「安価に開業できるのではないか」といった楽観的な見解が散見されます。しかし、マスタードシードの車両保存の経緯や類似店舗の実態を調査すると、そこには一般に知られていない過酷な現実があります。
まず、引退車両の取得費用自体は鉄くず価格(数十万〜数百万円)であっても、「輸送費(トレーラー特殊運搬+深夜誘導)」と「大型クレーン設置費」だけで数百万円単位の初期投資が吹き飛びます。さらに、車内に厨房配管やグリストラップ、業務用電気系統を通す工事は、通常のスケルトン物件工事よりも難易度が高く、結果的に莫大な開業資金を要します。
「マスタードシード」が長年営業を続けられたこと自体が、店主の並々ならぬ情熱とメンテナンスへの労力があったからこその奇跡であり、単なるビジネスライクな運営では維持し得なかった空間であったと言えます。