土俵をぐるりと回る懸賞旗を見渡すと、誰もが一度は目にしたことのある定番企業が際立つ。その代表格が株式会社永谷園ホールディングスだ。「お茶づけ海苔」「松茸の味お吸いもの」「あさげ」といったおなじみの商品名が連続して土俵を巡る光景は、大相撲中継の名物としてファンの脳裏に焼き付いている。
スポーツマーケティングの視点から見ると、相撲の懸賞は費用対効果が極めて高い。テレビCMをゴールデンタイムに放映すれば数千万円規模のコストが発生するが、懸賞なら本場所(15日間)を通じて1日1本出し続けても約105万円程度で済む。しかも、取り組み直前の緊迫した数分間、視聴者や観客の視線が土俵中央へ1点集中するタイミングで社名や商品名が連呼されるのだ。
公共放送の生中継では本来、特定企業の宣伝が厳しく制限される。しかし、伝統的な神事・興行の一部として掲げられる懸賞旗は画面越しに堂々と全国へ届けられる。視線誘導の強さと反復効果を兼ね備えたこの手法は、現代のデジタル広告にも引けを取らない強烈なブランド想起を生み出している。