極真黎明期を彩った伝説として、山崎照朝氏と添野義二氏(後の士道館館長)のライバル関係は外せません。スマートで鋭利な組手から「極真の龍」と称された山崎氏に対し、重戦車のような突進力と闘志で「城西の虎」と呼ばれた添野氏。性格も組手スタイルも対極にある二人は、互いを高め合う無二の盟友であり、最大のライバルでした。
第1回全日本大会の準決勝で激突した両者の死闘は、今も伝説として語り継がれています。道場での過酷なスパーリングで幾度となく拳を交え、互いの手の内を知り尽くした二人が演じた攻防は、観客の息を呑む緊迫感に満ちていました。結果は判定で山崎氏の勝利となりましたが、試合終了直後に見せた抱擁は、厳しい稽古を共有した者同士にしか分からない魂の共鳴そのものでした。
後年、添野氏が自身の流派を立ち上げて極真を去った後も、二人の間に通底する絆が消えることはありませんでした。お互いを武道家として深く認め合い、決して陰口を叩くことのない清廉な友情は、昭和格闘史における美しい美談として輝きを放ち続けています。