阪神甲子園球場を語る上で、ライトからレフト方向へと吹き抜ける「浜風」の存在を無視することはできない。大阪湾からの海風がスタンドをすり抜け、打球を押し戻す。右打者の放った完璧なホームラン性の大飛球が、フェンス直前で失速してレフトフライに終わる光景は日常茶飯事だ。
この風向きと風速は、天候や気温差によって刻一刻と表情を変える。湿度の高い初夏や秋口のナイトゲームでは、重い空気が打球の伸びを奪い、投手戦を演出する。逆に気圧配置が崩れ、低気圧が接近している時間帯には突風となって内野手の頭上を混乱に陥れる。
天候を味方につけたチームが勝利をたぐり寄せる。フライの落下地点を見極める外野手の足取りひとつにも、甲子園の風を知り尽くした職人技が宿っている。