明治維新の戦火を経て敷地が分断された現在、寛永寺の建造物は上野公園周辺に点在しています。それぞれの見どころを正しく把握することが、深い探訪体験への第一歩となります。
中心となる「根本中堂」は、現在の寛永寺の本堂にあたります。元々は川越喜多院の本地堂を移築したもので、堂内には秘仏である薬師三尊像(薬師如来・日光菩薩・月光菩薩)が厳かに祀られています。静寂に包まれた堂内に足を踏み入れると、幕府の庇護を受けた格式高い建築美と、数百年の歴史が醸し出す重厚な線香の香りが訪れる者を圧倒します。
一方、上野公園内にある「清水観音堂」は、京都の清水寺を模して寛永8年(1631年)に建立された舞台造りの名建築で、国の重要文化財に指定されています。ここで特に注目すべきは、歌川広重の名所江戸百景にも描かれた名物「月の松」です。枝を円形にねじり合わせて満月を模したこの松は、現代の職人技によって見事に復元され、円の隙間から不忍池の弁天堂を覗く構図は圧巻の美しさを誇ります。
さらに、蓮の花で名高い不忍池の中央に鎮座する「不忍池弁天堂」は、金運招福や芸能上達のご利益で親しまれ、四季折々の風情とともに多くの参拝者を集めています。