語呂合わせによる吉凶が一人歩きする現状に対して、全国約8万の神社を包括する神社本庁が示す「お賽銭の正しい金額」についての公式見解は極めて明確です。
神社の教理において、お賽銭の金額に決まりは一切存在しません。神社本庁の広報資料や神職への取材を総括すると、お賽銭の起源は古来、神前に供えられていた「初穂(その年に収穫された最初の米)」や布、紙に包んだ「おひねり」にあります。自給自足の農耕社会から貨幣経済へと移行する過程で、農作物の代わりに金銭を神前へ捧げるようになったのがお賽銭の原型です。
民俗学の研究者によると、5円を「ご縁」、45円を「始終ご縁」と結びつける語呂合わせ文化が一般庶民の間に定着したのは、昭和中期の高度経済成長期以降とされています。メディアの台頭とともに、参拝をより親しみやすく、エンターテインメント性を持たせて楽しむための「縁起担ぎ」として広まったものであり、神道の教義や教典にそうした記述があるわけではありません。
つまり、「10円を入れたからといって神罰が下ることも、縁が切れることもない」というのが神職の一致した見解です。神仏に対する日頃の感謝を形にしたものが賽銭であり、無理のない範囲で真心を込めて納めることこそが本質といえます。