選考委員たちの間で交わされる議論は、時に熾烈を極める。選考委員は「即戦力のプロ」を求めている。単にプロットが破綻していないという減点方式のクリアではなく、選考委員をねじ伏せる圧倒的な「熱量」と「独自の視点」がなければ、受賞の女神は微笑まない。
最新の選考傾向を分析すると、明確な地殻変動が見て取れる。かつて主流だった緻密な物理トリック一辺倒の作品は影を潜め、現代社会の歪み、高度情報化社会の倫理的ジレンマ、あるいは極限状態における人間の心理的リアリティを巧みに織り込んだプロットが評価を高めている。作家志望者が意識すべきは、謎解きの面白さの上に「なぜ今、この物語を書かねばならなかったのか」という切実な動機を提示できるかどうかだ。選考会が最も嫌うのは、どこかで見た既存作のパッチワークに過ぎない秀才肌の原稿である。