「日本選手権で勝った選手がなぜ代表から漏れるのか」——大会ごとにSNS等で繰り返されるこの疑問の背景には、国際陸連が推し進めるシビアな出場資格システムが存在します。かつては国内選考会での一発勝負が代表への最短ルートでしたが、現在は世界陸上の参加標準記録の突破、または「ワールドランキング(WAランキング)」によるターゲットナンバー内へのランクインが絶対条件となっています。
報道関係者や現場コーチ陣への取材によると、近年の参加標準記録の設定値は「世界の決勝進出レベル」にまで引き上げられています。男子100mの10秒00切り水準、男子走幅跳の8メートル20台後半など、一握りの超一流でなければ一発クリアは不可能な数字です。その結果、標準記録を突破できない選手は、国内外のグランプリシリーズを転戦してポイントを稼ぐランキング争いを強いられることになります。
ここに、日本陸上競技連盟が設定する「代表内定条件」のジレンマが生まれます。日本選手権での優勝者が参加標準記録を満たしていない場合、ランキング確定のデッドラインまで代表内定が出せないケースが頻発するのです。ある実業団指導者は特番インタビューにおいて「一発勝負の強さだけでは世界への扉は開かない。年間を通じたピーキングと、海外遠征の過酷な移動に耐えうるタフネスが不可欠になった」と現場の苦悩を吐露しています。