天ぷらあきちゃんを初めて訪れた客が最も衝撃を受けるのが、各席の目の前に小型のまな板とペティナイフのような包丁が無造作にセットされている光景です。一般的な天ぷら屋では一口サイズに切られた状態で提供されますが、福島町のホルモン天ぷら専門店では「客が自分で切り分ける」のが標準作法となっています。
取材関係者や地元の食文化研究者が語る背景には、歴史的な合理性があります。ホルモンは繊維が強く、包丁であらかじめ細かく切ってから衣をつけて揚げると、断面から肉汁や脂が流出して衣がベチャつきやすくなります。また、揚げる前のホルモンは滑りやすく均一に切りにくいため、「塊のまま短時間でカラリと揚げて客前に出し、各自が好みの大きさに切り落として食べる」という手法が定着しました。
食べ方の作法も確立されています。小皿に注ぐのは、卓上に常備された特製の酢醤油(ポン酢系タレ)。そこに韓国唐辛子の粉末を「これでもか」というほど山盛りに投入するのが現地流です。真っ赤に染まったタレを見た初見の客は驚きますが、この唐辛子は辛味よりも芳醇な風味と甘みが際立っており、揚げ物の油分を驚くほど軽やかに中和してくれます。切りたての熱い天ぷらをタレにくぐらせて口へ運ぶ一口は、他のご当地グルメでは代替できない中毒性を放っています。