『アイム・スティル・スタンディング』の魅力は、歌い手によって異なるドラマとエネルギーが宿る点にあります。原曲のエルトン・ジョン版、映画『SING』原語版でジョニー役を演じた英俳優タロン・エガートン版、そして日本中を熱狂させた日本語吹替版のスキマスイッチ・大橋卓弥版、さらには映画『ロケットマン』版を客観データとボーカル表現の観点から比較検証します。
特に注目すべきは、タロン・エガートンが辿った奇跡的なキャリアの変遷です。『SING』でジョニー役として『アイム・スティル・スタンディング』を歌ったタロンは、その卓越した歌唱力をエルトン・ジョン本人から絶賛されました。これが決定打となり、2019年公開のエルトン・ジョンの自伝的映画『ロケットマン』で主演のエルトン役に抜擢。口パクではなく全編自らの声でエルトンの名曲群を歌い上げ、ゴールデングローブ賞主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を獲得するという、映画界でも類を見ないサクセスストーリーを結実させました。
一方、日本における爆発的ヒットの立役者となったのが、スキマスイッチのボーカル・大橋卓弥による日本語吹替版です。公式発表資料や音楽関係者の間でも「海外ミュージカルアニメのローカライズとして最高峰の完成度」と絶賛されたこのバージョンでは、訳詞のクオリティが極めて高く評価されています。
「愚か者は気づかない 冷めたツラしてただスカして 孤独なくせに 輝こうとして 偽りの仮面に隠れている」
「勝ち目のない勝負で俺をすぐ見捨てて お前は笑い者にして騒いだ 今じゃ逆転のサーカス ピエロはお前さ だから アイム スティル スタンディング 誇りを胸に立ち上がれサバイバー」
原曲の持つ「逆境への怒りと反逆のエネルギー」を損なうことなく、日本語のリズムに落とし込んだこのフレーズを、大橋卓弥は持ち前のソウルフルで粘りのある歌声で見事に表現しました。カラオケ検索サービスJOYSOUNDでも『アイム・スティル・スタンディング/大橋卓弥(スキマスイッチ)[ジョニー]』として常にリクエストを集めており、日本のお茶の間に楽曲のメッセージを定着させた功績は計り知れません。