進化の過程で獲得した両者の特殊能力は、現代の先端バイオテクノロジー分野からも熱い視線を集めています。
垂直なガラス窓や天井を滑ることなく自在に疾走するニホンヤモリの特徴を支えているのが、極めて特殊な指先の構造です。一般に「吸盤」と表現されますが、実際には吸盤のような真空を利用した装置ではありません。電子顕微鏡レベルで観察すると、指の裏側には「剛毛(セータ)」と呼ばれる数十万本の微細な毛が密集し、その先端はさらに数千本の微小突起に枝分かれしています。
この極小の毛先が壁面の分子と接触することで生じる「ファンデルワールス力(分子間力)」こそが、ヤモリが壁に張り付く物理的トリックです。ヤモリの足の吸盤構造と呼ばれるこの接着機構は、水や接着剤を一切使わずに強力な吸着と瞬時の剥離を両立できるため、ロボット工学や次世代粘着テープの開発モデルとして応用されています。
さらに、トカゲの仲間と混同されがちなトカゲとヤモリの違いについても触れておきましょう。昼行性のトカゲにはまぶたがあり目を閉じることができますが、夜行性のヤモリには透明なウロコで覆われた固定の目蓋しかなく、まぶたを閉じることができません。また、トカゲの身体が硬いウロコで光沢を持つのに対し、ヤモリの体表は柔らかい粒状のウロコで包まれ、夜間の保護色として周囲の明暗に合わせて体色をわずかに変化させる能力を持ちます。
一方、水圏に生きるイモリの再生能力と特徴は、生物界の常識を覆すレベルに達しています。ヤモリやトカゲの「自切(尾切り)」による再生が軟骨組織の不完全な復元に留まるのに対し、イモリは骨、神経、筋肉を含む四肢を完全に元通りに再生できます。それにとどまらず、心臓の筋肉組織や眼のレンズ、脳の一部を欠損しても傷跡を残さず再生する能力を保持しており、再生医療研究の最重要モデル生物として大学や研究機関で日々解明が進められています。