現場を取材すると、大津市という都市が持つ特異な「都市心理」が見えてきます。大手掲示板やSNS、知恵袋などのコミュニティでは、しばしば「大津市民は滋賀県民としての帰属意識よりも京都志向が強いのではないか」というテーマが白熱した議論を巻き起こします。
JR大津駅から京都駅までは、琵琶湖線の新快速でわずか2駅、所要時間は約9分にすぎません。京都市営地下鉄東西線と直通運転を行う京阪京津線も走っており、大津市民の生活圏・商圏・通勤通学先は京都・大阪へ極端に傾斜しています。地元住民からは次のような生々しい声が聞かれます。
「買い物に行くなら草津のエイスクエアか、電車で京都駅・烏丸へ出るのが当たり前。大津駅前は官公庁街としては落ち着いているが、休日に遊ぶ場所という感覚は薄い」(大津市在住・40代会社員)
「湖北の長浜や彦根の人たちと話すと、『大津はもう京都みたいなもの』と揶揄されることがある。逆に大津市民からすると、長浜や高島は同じ県内でも小旅行に行くような距離感」(草津市在住・30代公務員)
この心理的距離感は、琵琶湖という広大な水域によって地域が「大津・南部」「甲賀」「東近江」「湖東」「湖北」「湖西」に分断されているという滋賀特有の地理環境がもたらしたものです。県庁所在地である大津は、行政の中枢でありながら、滋賀県の中心というよりは「関西広域都市圏の東のゲートウェイ」としてのアイデンティティを色濃くまとっています。