船越保武の彫刻を語る上で欠かせない二大モニュメントが、長崎の西坂の丘に建つ『長崎二十六聖人等像』と、カトリック的受難の極致を描いた『原の城』です。なぜ彼の作品は、時代や国境を越えてこれほどまでに鑑賞者の足を止めさせるのでしょうか。
1962年に完成した『長崎二十六聖人等像』は、豊臣秀吉の命によって処刑された26人の殉教者を等身大で一列に並べた大レリーフです。数年間にわたる徹底した資料考証と祈りのなかで制作され、個々の表情には死の恐怖ではなく、天を仰ぐ清らかな確信が宿っています。この大作により、船越は高村光太郎賞を受賞し、日本を代表する具象彫刻家としての地位を不動のものにしました。
一方、1971年に発表された『原の城』は、島原の乱で壊滅したキリシタン農民の亡霊を想起させる立ち姿の像です。腐食した鎧をまとい、虚空を見つめるその姿には、滅びゆく者への深い哀傷と不屈の魂が刻み込まれています。彫刻の表面にあえて粗々しい質感を残し、内側から滲み出る情念を表現した本作は、国内のみならず海外のアートシーンでも極めて高い評価を獲得しました。