寺島しのぶ氏の映画キャリアにおける最大の転換点は、間違いなく2003年に訪れました。文学座を退団後、本格的に映像世界へ進出した彼女は、荒戸源次郎監督の『赤目四十八瀧心中未遂』でヒロイン・綾を演じ、観客と批評家の度肝を抜きました。
背中に彫られた刺青、過酷な境遇の中で主人公と惹かれ合う淫靡で純粋な肉体関係――。劇中で見せた寺島しのぶ 濡れ場のシーンは、単なる官能美ではなく、逃げ場のない人間たちの生への渇望が濃密に刻み込まれていました。同作で彼女は第27回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞を受賞。さらに同年公開の廣木隆一監督作『ヴァイブレータ』でも、心の病を抱えながら見知らぬトラック運転手と旅に出る女性を全裸で演じきり、国内外の映画祭で主演女優賞を席巻しました。
そして2010年、若松孝二監督の『キャタピラー 映画』において、彼女の表現力は世界の頂点に達します。太平洋戦争で四肢を失って帰還した「軍神」の夫と、その理不尽な性欲と暴力に耐えながら生きる妻・シゲ子を熱演。極限状態の夫婦の営みを衣服を剥ぎ取って演じた彼女の姿は、反戦の強烈なメッセージとともに世界中に衝撃を与え、第60回ベルリン国際映画祭 女優賞(銀熊賞)を日本人として左幸子氏、田中絹代氏に次ぐ史上3人目として獲得しました。