伊勢神宮に参拝する際、多くの愛好家が買い求めるのが神宮会館や参集殿で頒布されているオリジナルの御朱印帳です。単なるノートではなく、職人の高度な技術と日本の美意識が濃縮された逸品が揃っています。
なかでも高い人気を誇るのが「蒔絵(まきえ)御朱印帳」です。漆黒や朱色などの艶やかな地に、内宮の宇治橋や五十鈴川のせせらぎ、桜の花弁が繊細な蒔絵技法で雅やかに描き出されています。手にとった瞬間の重厚感と光を反射する上品な光沢は、大量生産品にはない風格を漂わせています。
一方、自然の温もりと素朴な神聖さを好む参拝者から絶賛されているのが「木文字(きもじ)御朱印帳」です。表紙に天然木(国産材)の薄板が用いられており、職人の手によって神宮の文字が刻印されています。木目の表情や手触りが一冊ごとに微妙に異なり、年月を経て使い込むほどに風合いが深まっていく経年変化を楽しめるのが醍醐味です。
また、御朱印収集家の間で語り継がれる作法として「御朱印帳の最初の1ページ(または2ページ)をあらかじめ空けておく」という慣習があります。日本全国の神社を巡拝する際でも、巻頭の神聖な最初の見開きには国家の最高神である「外宮」と「内宮」の御朱印をいただくため、あえて2ページ目や3ページ目から書き始めてもらうという敬虔な敬意の表れです。もちろん強制的なルールではありませんが、神宮に対する日本人の深い敬神の念を物語るエピソードとして知られています。