仕込みの成否を分ける最大の要素は、言うまでもなく果実そのもののクオリティだ。国内屈指の産地である山形県をはじめとする名産地からは、初夏にかけて多様な品種が出荷される。どの品種をベースに選ぶかで、完成する果実酒のキャラクターは劇的に変わる。
繊細で上品な酸味、そして透明感あふれるフローラルな香り立ちを求めるなら、果物の宝石と称される「佐藤錦」が筆頭候補になる。果皮が薄く果汁の移行がスムーズなため、仕込んでから短期間で美しい淡いピンク色の液体へと変化していく。一方、力強い甘みと深みのあるルビー色を長期間楽しみたいなら「紅秀峰」が最適だ。果肉が締まっており糖度が高いため、アルコールに負けない濃厚なボディ感を持つ自家製リキュールへと育つ。
選別時の鉄則は、傷のない完熟手前の張りのある実を選ぶことだ。わずか一つの傷口から果汁が過剰に漏れ出せば、酒全体が濁る原因となる。果軸(軸)を付けたまま丁寧に水洗いし、傷んだ粒は冷徹に見極めて排除する選別眼こそが、極上の仕上がりを約束する。