ガンダムシリーズに登場する数多のモビルスーツの中でも、ウイングガンダムゼロEWほど「初見の衝撃」を後世まで語り継がれている機体は稀です。最大の特徴である背部の4枚の翼は、それまでのSFリアルロボットアニメにおける「航空力学に基づいた主翼」という常識を真っ向から覆しました。羽毛の一本一本がしなやかに広がる優美なラインと、無機質なメカニクスフレームの融合は、一歩間違えれば荒唐無稽と受け取られかねない挑戦的なアプローチでした。
しかし、OVA本編における卓越した演出がその懸念を払拭します。大気圏突入時に母鳥のように胴体を包み込む耐熱シェルターとしての機能美、そして雲海を切り裂いて降下する神々しい姿は、視聴者の脳裏に強烈な美学を焼き付けました。劇中クライマックスでマリーメイア軍の本拠地シェルターに向け、限界を超え崩壊しながら放たれたツインバスターライフルの三連射シーンは、ヒイロ・ユイの生き様とともにアニメ史に残る名場面として語り継がれています。
デザインを手がけたメカニックデザイナー・カトキハジメ氏が構築したプロポーションは、静止状態の美しさだけでなく、ポージングさせた際のシルエットの変化まで徹底的に計算されています。この「有機性と機能性の高度な止揚」こそが、時代や世代の枠を超え、2020年代半ばを過ぎた現在も国内外でウイングガンダムゼロEWが最高峰の支持を集め続ける根本的な理由です。