紙のタブロイド紙が発行部数を減らし、夕刊フジのように歴史を閉じる媒体が現れる一方で、皮肉にも「タブロイドの思想」はインターネット空間でかつてない繁栄を極めています。
現在のYahoo!ニュースのトピックス、SmartNewsの見出し、さらにはYouTubeのショート動画やTikTok、X(旧Twitter)のトレンド欄を支配しているのは、極限まで文字数を削り、感情的なトリガー(怒り、不安、好奇心、性的関心)を刺激してクリックさせる「デジタル・タブロイド」の手法そのものです。
かつて駅の売店でサラリーマンの目を奪うために数ミリ単位で工夫された紙面レイアウトは、現代では「アテンション・エコノミー(関心経済)」のもと、CTR(クリック率)とページ滞在時間を最大化するアルゴリズムへと最適化されました。著名人の失言の切り抜き、一般人のマナー違反への過激なバッシング、真偽不明の暴露系インフルエンサーの投稿は、かつて英米のタブロイド紙が築き上げたセンセーショナリズムの生態系をそのまま受け継いでいます。
紙という物理的器が消失しつつある今、メディアの送り手も受け手も、私たちが無意識に「タブロイド化された情報空間」の中で生活しているという冷徹な事実を自覚する必要があります。