壁がくるりと裏返る仕掛けは、現代のからくり屋敷のイメージそのものだ。だが、その目的は単なる隠れんぼではない。目的は「敵の視覚的錯覚」を利用した心理戦だ。追い詰められた忍びが壁に消えたように見せることで、襲撃者に「妖術を使った」という恐怖心を植え付け、数秒の動揺を生み出す。その数秒こそが、生死を分ける脱出の隙となった。
また、吹き抜けのように見える天井の裏側に設けられた「中二階」や「太鼓部屋」も欠かせない。外からは2階建てに見えるが、実際には薄い中二階が存在し、そこから下階の様子を監視・攻撃できるようになっている。足音を外に漏らさないための防音工夫や、光を完全に遮断する二重戸など、徹底した情報隠蔽の知恵が空間のあらゆる場所に埋め込まれていた。