筆を握ってから30年以上の月日が流れた。かつて世間を驚かせたのは、体をいっぱいに使って書く躍動感あふれる大字だった。しかし、近年の彼女の作品には確かな深化が見られる。豪快さはそのままに、白と黒が織りなす「余白」が息をのむほど雄弁なのだ。
「以前の書には溢れ出るエネルギーの凄みがありました。ですが今の作品には、静寂の中に深く吸い込まれるような懐の深さがあります」と、美術関係者は語る。上手く見せようとする自意識がどこにもない。だからこそ、かすれの一筋、墨のにじみ一つが、見る者の心奥にダイレクトに響く。