交戦距離によって、両者のパワーバランスは劇的に反転します。近接格闘戦(WVR:視程内戦闘)と遠距離戦(BVR:視程外戦闘)の2つのシチュエーションから、その実力を精査します。
近接格闘戦(ドッグファイト):F-22が誇る異次元の機動性とスーパークルーズ
視界内で互いの尾部を奪い合うドッグファイトに突入した場合、勝敗の行方は明確です。F-22が圧倒的な優位を誇示します。
F-22には、推力偏向(スラスト・ベクタリング)ノズルを備えたプラット&ホイットニー社製F119-PW-100エンジンが2基搭載されています。この二次元ノズルにより、失速限界を超える大迎え角飛行(ポストストール機動)を軽快にこなし、通常の戦闘機では考えられない急旋回や機首上げを実現します。さらに、アフターバーナーを使用せずにマッハ1.82もの速度で巡航できるスーパークルーズ超音速巡航能力を有しており、エネルギーを失わずに立体的な戦闘空間を支配可能です。
一方のF-35は単発のF135エンジンであり、推力偏向ノズルは持たず、最大速度もマッハ1.6程度に制限されています。機体内部に大型爆弾槽を抱えるため胴体が太く、空気抵抗と翼面荷重の観点から、旋回性能や上昇力といった古典的な運動性ではF-22に太刀打ちできません。
視程外戦闘(BVR):F-35のセンサーフュージョンと電子戦が描く逆転のシナリオ
数十キロから数百キロ離れた距離からミサイルを撃ち合うBVR戦闘では、様相が一変します。現代空戦の9割以上を占めるこの領域において、F-35はF-22を窮地に追い込むほどの脅威を発揮します。
F-35の真骨頂は、APG-81 AESAレーダー、機首下面の光学照準ポッド(EOTS)、そして機体各所に配置された6基の赤外線カメラからなるAN/AAQ-37分散開口システム(DAS)です。これらのセンサーが捉えた情報は単一のディスプレイに統合され、パイロットはヘルメットバイザー越しに360度すべての脅威を直感的に把握できます。さらに、多機能先進データリンク(MADL)を用いて、編隊内のF-35同士が無線の電波を敵に悟られることなく標的データを瞬時に共有します。
F-22も強力なAPG-77レーダーを搭載していますが、アビオニクスのアーキテクチャは1990年代の設計がベースとなっており、情報処理能力やセンサーの統合度、パッシブ探知能力の広さではF-35に軍配が上がります。自らは電波を出さず、赤外線センサーや別部隊からのデータリンクによってF-22の位置を特定し、超長距離から空対空ミサイル「AIM-120D」や最新の「AIM-260 JATM」を放つ戦術をとられた場合、F-22といえども一方的な勝利は約束されません。