現代の米菓製造業は、効率化とコスト削減の狭間で大きな転換点を迎えている。オートメーション化された近代的な工場では、コンピュータ制御によって毎分何千個もの製品が均一に焼き上げられていく。全国米菓工業組合の動向を見ても、人手不足と原材料高騰への対応として省人化を進める動きは主流だ。
しかし、佐伝製菓が選んだ道は真逆だった。生地のひび割れ一つ、焼き網の上のわずかな膨らみの違いを目視で選別し、手作業で炭火の火加減を調節する。佐伝の工房に一歩足を踏み入れれば、そこが効率とは無縁の「味の聖域」であることがよく分かる。
「機械は決められた温度を守ることは得意だが、今日吹き込んできた風の冷たさまでは考慮してくれない」。現場を仕切る親方はそう笑う。あられ・煎餅という日本人に最も身近な米菓だからこそ、手のひらを通じた温もりを失ってはならない。この揺るぎない矜持が、量産品には決して真似できない深い滋味を生み出し続けている。