紅白歌合戦に海外アーティストが出場する最大の理由は、NHKが直面している「メディア環境の劇的な変化」と「選考基準のデジタル化」にあります。NHKが毎年公表している公式の選考基準は主に以下の3点です。
第一に「今年の活躍」、第二に「世論の支持」、そして第三に「番組の企画・演出」です。かつてこの基準を測る指標は、CDの売上枚数やオリコンランキング、有線放送のリクエスト数、自社実施の世論調査が主力を占めていました。しかし、ストリーミング配信が音楽消費の中心となった現在、NHKは選考の根拠としてBillboard JAPANの総合ソング・チャート「JAPAN HOT 100」、SpotifyやApple Musicの国内再生回数、さらにはYouTubeのMV再生回数やSNSのUGC(ユーザー生成コンテンツ)拡散数を極めて重視しています。
「なぜ紅白にK-POPが多いのか」という疑問に対する答えも、この客観的データにあります。現代の日本のストリーミングチャートを検証すると、上位100曲のうち相当数がK-POPグループやグローバル展開を前提としたボーイズ・ガールズグループで占められています。音源再生数だけでなく、東京ドームや日産スタジアムを数日間満員にする圧倒的な動員実績とファンビジネスの熱量は、国内の一般的なポップス歌手を凌駕しているのが冷酷な市場の現実です。
さらに見逃せないのが、NHKの経営戦略としての「NHKプラス」などの配信指標と海外発信力の獲得です。受信料制度への逆風が強まるなか、10代から30代の若年層層に対する番組リーチは公共放送の存続に関わる至上命題となっています。グローバルに熱烈なファンダムを持つアーティストをラインナップに加えることで、放送と同時にX(旧Twitter)の世界トレンド上位を独占し、大晦日以降の配信アーカイブの再生回数を爆発的に跳ね上げる狙いがあります。