ファンの記憶に新しいのが、社会情勢に応じてめまぐるしく変化した「延長制限」の歴史です。特に2010年代以降、日本社会を揺るがした有事のたびに、プロ野球の延長戦規定は柔軟かつドラスティックに変更されてきました。
2011年の東日本大震災直後には、東京電力管内の深刻な電力不足に対応するため「3時間30分ルール(試合開始から3時間30分を経過した時点で新しいイニングに入らない)」が導入されました。さらに2020年の新型コロナウイルス感染拡大初期には感染防止対策として「延長10回打ち切り」が適用され、2021年シーズンには緊急事態宣言や飲食店の時短要請、交通機関の終電繰り上げなどに合わせ、「延長戦なし・9回打ち切り」という異例のレギュレーションが採用されました。
現場の指揮官や選手たちにとって、この9回打ち切り特例は戦術の根底を覆すものでした。当時の監督たちの共同会見や談話では、「延長がないからこそ、同点の8回や9回頭から守護神を惜しみなく投入できる」「引き分けを実質的な勝ち点計算に組み込む必要があった」という生々しい声が残されています。
しかし、社会的な行動制限の解除に伴い、NPBと12球団による実行委員会は段階的にルールを正常化させました。2022年シーズンから従来の「延長12回制・時間制限なし」へと完全回帰し、2026年の現在に至るまでこの運用が盤石に維持されています。現在では「ナイターは何時まで続くのか」という疑問に対し、「イニング基準(12回)が満たされるまで何時までも続く」というのが法的な回答となります。