インターネット上では今なお、「酒鬼薔薇聖斗」を自称した怪物の影を追う無数の目撃情報や憶測が飛び交う。特定の地域に潜伏しているという噂がSNSで拡散されるたび、現地住民の間には目に見えない緊張と疑心暗鬼が広がる。
しかし、ネット上の情報の多くはデマや類似人物の誤認に過ぎない。実態としての男は、極端なまでに自己の痕跡を消し去り、近隣住民との接触を極力避けて息を潜めている。社会が抱く「絶対的な悪の怪物」という虚像と、現実のアパートの一室で老いと孤独に怯えながら暮らす元少年Aの実像との間には、残酷なまでの落差が横たわっている。