国家錬金術師としての権能を持ちながら、エドワードはキメラ化したニーナを元に戻すことができませんでした。人体の生体融合は不可逆であり、当時のアメストリスの錬金術技術では分離すれば死を招くだけだったためです。
自らの無力さに打ちひしがれる中、軍の監視下にあったタッカー邸を国家錬金術師の抹殺を目論む「傷の男(スカー)」が強襲します。スカーはタッカーを一撃で撲殺した後、物言わぬキメラと化したニーナの頭部を右手の分解術で破壊し、命を絶ちました。
スカーが手を合わせ、「哀れな姿になり果てて…神の理を外れたその身体、せめて安らかに眠れ」と祈りを捧げた描写は、神への冒涜を断罪する制裁であると同時に、実験動物として生き続けるしかなかったニーナに対する唯一の慈悲(救い)でもありました。激しい雨の中、冷たい壁に残された血痕を前に立ち尽くすエドワードの姿は、物語が単なる冒険活劇ではないことを読者に刻みつけました。