五つ子ヒロインが火花を散らす群雄割拠のラブコメディにおいて、中野三玖が勝ち取ったポジションは極めて特殊でした。講談社が実施した公式キャラクター人気投票の第1回では、総投票数の3割以上を占める2,393票を獲得して堂々の首位を独走。なぜこれほどの求心力を発揮したのか、その真相を読み解く鍵は「読者との心理的距離感」にあります。
三玖の際立った初期設定は「他の姉妹に比べて秀でた特技がなく、強い劣等感を抱えている」という点でした。長女・一花の高いコミュニケーション能力や演技力、次女・二乃の自己主張と女子力の高さ、四女・四葉の底抜けの明るさと運動能力、五女・五月の優等生然とした真面目さ。そうした輝かしい姉妹に囲まれるなか、三玖だけが「自分は何をやっても器用になれない」と塞ぎ込んでいました。
そんな彼女が主人公・上杉風太郎との出会いを契機に、自らの殻を少しずつ破り始めます。視聴者や読者が抱く「自分も何者でもないのではないか」という等身大のコンプレックスが、三玖の姿にそのまま投影されました。不器用ながらも風太郎の好みに合わせようと焦げたパンを焼き続け、指を絆創膏だらけにしながら料理の腕を磨くプロセス。その姿こそが、ファンが口を揃えて中野三玖のかわいい理由として挙げる「報われてほしいと願わずにいられない健気さ」の正体です。