この野心的な構造を手掛けたのは、建築事務所「アトリエ・天工人」を主宰する建築家・山下保博氏だ。彼が提示した解は、古来より伝わる伝統工法「版築」を現代建築の構造技術へとアップデートする試みだった。版築とは、型枠の中に土と石灰、砂などを層状に流し込み、突固めて堅牢な壁を作る技術である。
山下氏は、単にレトロな素材へ回帰したわけではない。構造計算を綿密に重ね、耐震性や防火性を確保しながら、建築業界における地球環境負荷の低減を模索した。今日でこそ叫ばれるサステナブル建築の理念を、彼は先陣を切って実験的な居住空間へと昇華させたのだ。重厚な土壁が描く地層のようなグラデーションは、自然の力強さと意匠美を両立させていた。