Google検索もSNSもない時代の情報収集は、足と五感を使う泥臭い作業でした。新しい飲食店を探すには、雑誌『Tokyo Walker』や『ぴあ』、あるいは口コミ情報が頼りでした。映画の上映時間を調べるには新聞のラテ欄(ラジオ・テレビ欄)や情報誌をめくり、旅行へ行く際は書店で分厚い道路地図『マップル』を購入して助手席で開くのがドライブの定番でした。
音楽との出会いも一期一会でした。CDショップへ通い詰め、店内の試聴機でヘッドホンを耳に当てて新しいアーティストを発掘する。ジャケ買い(ジャケット写真の直感だけで購入すること)に賭けて失敗する悔しさも含めて、能動的にカルチャーを掘り下げる楽しさがありました。情報は「向こうから流れてくるもの」ではなく、「自ら汗をかいて手に入れる価値あるもの」だったのです。
対人関係においても、その場にいる相手との対話が絶対的な中心でした。食事中に相手が手元を気にすることもなく、目の前で交わされる会話の熱量や表情の変化に意識が集中していました。後から振り返れば非効率で手間のかかる暮らしでしたが、一つひとつの行動に明確な手応えと実感があった時代でした。