ドラマ『奥様は、取り扱い注意』の最終話(第10話)は、日本のテレビドラマ史に残る大胆なクリフハンガー(結末を持ち越す演出手法)として大きな話題を呼びました。平穏な日常を手に入れたはずの主人公・伊佐山菜美(綾瀬はるか)と、IT企業経営者として穏やかに寄り添っていた夫・伊佐山勇輝(西島秀俊)。しかし、勇輝の真の正体は、国家の安全保障を担う警察庁警備局警備企画課(通称・ゼロ)の公安捜査官でした。
最終盤、町の利権を巡る巨大な闇を暴いた菜美が自宅リビングへ帰宅すると、そこにはスーツ姿で静かに待ち受ける勇輝の姿がありました。お互いの嘘と本性をすべて曝け出し、静寂の中で勇輝は懐から拳銃を取り出し、笑顔を浮かべる菜美の胸元へと銃口を向けます。菜美が柔らかく微笑み返した次の瞬間、画面は暗転し、乾いた「パーン」という銃声が1発鳴り響いてエンドロールを迎えました。
放送直後のSNSやネット掲示板では「バッドエンドなのか」「菜美は撃たれて命を落としたのか」と騒然となりましたが、この銃声の真実は「勇輝は菜美を撃っていない」というのが正解です。勇輝が放った銃弾は菜美を標的にしたものではなく、背後から急襲してきた敵への威嚇、あるいは彼女を工作員の追手から偽装死させて守るための偽装発砲であったことが、その後に公開された劇場版の冒頭シークエンスで明確に明かされています。
作中では第1話から緻密な伏線が散りばめられていました。勇輝が時折見せる鋭利な視線、左手の薬指を不自然に触る癖、完璧すぎる生活リズム、そして菜美の過去にまつわる情報が警察内部へ微細に流出していた描写など、「愛する夫が最大の監視者であった」という構図は、脚本の段階から極めて計算し尽くされた仕掛けでした。